国慶節の連休最終日。どうしても直接、足を運びたかった場所へ訪問。日本に帰れない今だから、生粋の長崎市民だから確かめたかった場所でした。

その出会いの結果とは?長崎の原型となった中国の味とは?いつも食べる長崎の味との差は一体?新しい発見もあって楽しめました。

十年来の福州の借りを上海で返す

十数年前、仕事で訪れた福建福州市で「焼きそば」を何気なく食べた時、その味付けに衝撃を覚えました。化学調味料で衝撃を受けた!のではなく、懐かしい故郷の味付けを思い出して衝撃を覚えたのでした。正にトロミの無い「皿うどん太麺」の味付けだったのです。

「ちゃんぽん」と「皿うどん」の生みの親は長崎に渡った福建華僑で四海樓の初代陳さんと言われています。お金のない中国人留学生のために夜食を作ろうと、ありあわせの材料で作ったのが発祥との話。

「焼きそば」を食べた後に「はっ!ちゃんぽんの原型もあるのでは!?」と思ったのですが、残念ながら出張中にそんな時間はなく調査できずに断念。

上海に戻って福建料理のレストランを探すものの、「福建千里香馄饨」と呼ばれる福建風ワンタンの店舗は異常に多いのですが、一般的な福建料理を味わう店がなかなか見つからない。

上海で福建料理を探して三千里。2020年にマルコはようやく生みの親に出会えました。食への探究心は執念に近く想いは深いのです。

福建省莆田市の味付け闽味海鲜酒楼

虹口区で見つけた「闽味海鲜酒楼」。正直、アクセスは悪く近くの地下鉄から20分以上も歩くのですが、期待を裏切らない味です。5回以上に渡って数種類の料理をリサーチ。
※味の評価は私の主観なので、訪問時は自己責任&ノークレームで。

店舗の漢字「闽(mǐn)」とは福建省の別称。ここのレストランは「福建省莆田市(Fú jiàn Shěng Pú tián shì) 」の専門店。一階にいる男性スタッフは莆田市の方。確認していませんが、コックも同じく福建省出身だと思われます。

一階には海鮮がいい感じに並んでいます。ちなみに莆田市は海に近い都市のようです。海鮮の取り扱いも多く料理に期待が持てます。メニューを開くと中には「海鲜卤面(hǎi xiān lǔ miàn)」と紹介されたページが。

「海鲜卤面!小份」と「海螺(hǎi luó)バイ貝」をオーダー。「海鲜卤面の大份は、一人じゃ無理ですぜ」とのこと。

ちゃんぽんの厳密ルールの由来が中国名にも記載

「海鲜卤面」の「卤面(lǔ miàn)」とは「あんかけ麺」という中国語で、「卤(lǔ)」には「にがり」の意味も含まれます。

「なぬ!にがりとな?」ご存じの方も居るかも知れませんが、長崎で提供される「ちゃんぽん」には「唐灰汁(とうあく)」が含まれる麺が多くの店舗で使用されています。「唐灰汁」とは、かん水の類似品(一種)。

長崎ではこの「唐灰汁」が含まれる麺を使った品のみを「ちゃんぽんだっ!」と叫ぶ地元民が多いのが周知の事実。

「にがり」と「唐灰汁」。んまぁー、やっぱり名前の由来を紐解くと、食の歴史の繋がりがあるんですねぇ。

※「汤肉丝面(tang ròu sī miàn)」が由来と言われていますが、福建であれば味付けは類似し料理の呼び名は福建の各地方で違いがあるので、この「汤肉丝面」が必ず由来では無いと思います。

出てきた海鮮麺をいざ実食

期待を膨らまして登場した海鮮麺。確かに小さいサイズでちょうど良いくらいの大きさ。女性だと二人でちょうどのサイズです。


正直見た目はなんとなく、ちゃんぽんなのです。具材はチンゲン菜、人参、干ししいたけ、白菜、玉ねぎ、セロリ。豚肉、豚の脂身、牡蠣、アゲマキガイ。麺は少し太めのストレートですが、ちゃんぽん麺より細めの感じ。

野菜、豚肉、海鮮の黄金トライアングル。「ちゃんぽん」に入る蒲鉾が無いだけで、具材もちゃんぽん的な配合です。具材は季節によって変わるでしょうから、何にしても野菜と肉、海鮮が入っている点は、ちゃんぽんと類似。

スープも白濁で豚や鳥由来の味付け。ラードが使われているので濃厚でコクが有るスープは中国でも非常に少数派。この辺もやはり、ちゃんぽんと類似だっ!しかし野菜の甘みや全体の味のバランスは食べ慣れている、ちゃんぽんに軍配かな。

実際の訪問記の様子はこちらから

もちろん長崎で食する「ちゃんぽん」と違いはありますが、長崎の名物料理のルーツを楽しめる一杯だったのでした。他にも「闽南五香卷(mǐn nán wǔ xiāng juàn)豚肉を詰めた湯葉の素揚げ」等もお勧めです。

以前、五島うどんのルーツと言える、製造工程が五島うどんと類似していた浙江省の「素面/索面」同様、長崎に入ってきた食文化のルーツをまた一つ知ることが出来た瞬間でした。

やはり福建省を再訪して、食のルーツを調べなければイケないです。上海でこれだけの味を提供できるのであれば、本場福建省だと更に美味い店舗もあるだろうに。何にしても故郷を思い出す一品、ごちそうさまでした!

中国ちゃんぽんデータ

店舗名:闽味海鲜酒楼(Mǐn wèi hǎi xiān jiǔ lóu)
住所:虹口区广灵二路379号(水电路と凉城路の中間)
電話:021-55139177
最寄り駅:地下鉄3号線赤峰駅
アクセス:赤峰駅から徒歩20分
地図:コチラから

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