政策あれば対策あり。話を聞いて「なるほど」と思った出来事でした。本当に祝いたい気持ちってありますものね。

私には13年くらい付き合いのある上海人のおじさんがいます。上海で語学留学を終えた私は中国に残って語学学校の立ち上げに参加をして働いていたのですが、語学学校が入居していた同じフロアに平面デザインの事務所を経営していたオジサンがいました。

隣近所であることと親戚が長崎生まれの日本人と結婚したそうで、それが縁で何かと良くしてくれた方。当時は長髪でヒョロリ細身の風貌がなんとなく仙人風。

語学学校の事務所に顔を出しては「喝咖啡吧(hē kā fēi ba)コーヒー飲むぞ」と休憩時間と会話を楽しむひとときを与えてくれた亀仙人いや、カフェ仙人なおじさんだったのです。

今でも「来喝咖啡吧(lái hē kā fēi ba)コーヒー飲みに来い」と連絡があるので、久しぶりに事務所を訪れました。

現在の事務所は水彩画と油絵が飾ってあります。
中国の水彩画

このおじさん、美術系の大学出身で絵画の勉強していたそうですが、仕事として平面デザインを開始。若い頃はウルトラマンの仕事もしていたそうです。

私の知っている仕事ではCDのジャケットデザインを手がけたり意外とやり手?な人なのですが、「歳をとって目が疲れるから」と今はデザインの仕事は極力抑えて、昔のように絵を描いて生計を立て始めたそうです。

そんな仙人おじさんと、コーヒーを飲みながら雑談をしていたのですが、一つ今の中国の実情の話を聞くことができました。

失礼な話なのですが正直、画は売れてないのかなぁと思っていたのですが、本人曰く意外と売れているそうなのです。中央の水彩画のサイズだと1万元(16万円)ていどで販売できると教えてくれました。
販売を待つ水彩画

プロの画家としてちゃんと生計が成り立っているらしいのですが、売れている背景が中国らしい話でした。

中国ニュースに敏感な方だったらご存知と思いますが、数年前から政府の取り締まりが厳しくなった中国。

昔のように政府関係の派手な宴会や高級品の贈り物などは鳴りを潜めています。そんな時に贈り物として使われているのが絵画らしいのです。

元々取り締まりが始まった背景の一つとして、贈り物としての高級品、例えば高級白酒を贈る行為は飲んでもらう意味よりも、贈った後に受け取った側は転売をして現金化をしている事も多かったのです。

賄賂性が高いので取り締まりの対象となった訳ですが、もちろんお祝いなどで本当に何かを贈りたいという場合に、仙人のような絵画が選ばれているとのこと。

素直な気持ちで贈り物を贈りたい。けど下手に換金性の高い品を受け渡すと変な誤解を招く恐れがある。そこで登場、仙人おじさんの絵画。

有名な画家の絵画を贈ると投資目的や転売しやすいので賄賂的な要素があると思われ目をつけられる可能性が捨てきれない。

おじさんのように有名ではない画家の絵画は転売が難しいが、自宅に飾って楽しまれる。そこまで高くない価格帯、目の保養にもなるため贈り物として喜ばれるようなのです。

「だから俺みたいな画家の画が今売れてるんだー」と一言。仙人、良かったね!まさに「上有政策,下有对策(shàng yǒu zhèng cè xià yǒu duì cè)政策あれば対策あり」なのです。

仙人的には画家として有名になる事よりも、画が売れればハッピーな訳でして、投資対象として価値は無いが、何かを贈りたいと検討している人には丁度よい仙人の画。

強がって売れていると言っている訳ではなく、既に梱包済みの絵画が置かれていたので、本当に売れているんだと思います。

ちなみに今回撮影した水彩画も依頼主が既にいて、ある記念式典で飾られる画のようです。

何でもかんでも取り締まりしてしまうと、経済も回りません。本当にお祝いしたい場合は、換金性の低い品を受け渡しに利用している、中国のお話でした。

ちなみにコーヒー仙人、展示会や画家に集まりに参加をして情報交換や画のアピールをしているようですが、そもそも政府機関の知り合いが多い立場なので、人脈を活かした商売が成り立っている可能性が十分に考えられます。

有名でない画家の画が何でもかんでも売れている、という意味では無いと思いますので、誤解無いように。